2025年7月07日

当院のホームページをご覧くださりありがとうございます。院長の守谷洋です。北海道も本格的な夏がやってきました。(暑すぎです・・)2025年4月より帯状疱疹ワクチンの定期接種が可能となりました。65歳以上で補助を受けられる対象者には自治体より予診票が郵送されています。外来にて「帯状疱疹って何?」「ワクチンはどっち打てば良いの?」とお声をいただくことが増えてきました。今回は帯状疱疹とはどんな病気か、2種類の帯状疱疹ワクチンについてご説明したいと思います。

〇帯状疱疹とは・・・?
帯状疱疹(たいじょうほうしん)は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化により引き起こされる皮膚疾患です。子供のころにかかった水痘(みずぼうそう)のウイルスは、治癒後も体内に潜伏して、加齢や免疫機能の低下などをきっかけに再び活動を始めることで皮膚に痛みを伴う発疹ができます。これが帯状疱疹です。
〇帯状疱疹の症状
体の左右どちらか一方に「ぴりぴり」「ちくちく」とした痛みやかゆみが現れ、2-3日後にその部位に赤い発疹や水ぶくれが出てきます。帯状疱疹の多くは胸や腹部、背部、腰などの上半身に現れますが、顔や目、頭などに現れることもあります。
〇帯状疱疹の治療
抗ウイルス薬の内服や点滴が中心になり、鎮痛剤も併用します。
〇帯状疱疹の合併症
皮膚の症状が治った後も、痛みが残ることがあり、3か月以上痛みが続くものを帯状疱疹後神経痛(PHN)と呼びます。50歳以上で帯状疱疹を発症した人の約20%がPHNになると言われており、80歳以上の方では約30%と高くなります。「焼けるような」持続性の痛みや「ズキンズキン」とうずくような痛み、衣服が擦れるなど軽い接触だけでの痛みがみられ、長期間にわたり睡眠や日常生活に支障をきたすことがあります。また目や耳に帯状疱疹を発症すると、めまいや耳鳴り、重症化すると顔面神経麻痺や難聴、視力低下などをきたす場合があります。
〇帯状疱疹になりやすい人は・・・?
帯状疱疹の発症には年齢が大きくかかわり、高齢になると発症しやすくなります。日本人では50歳以上で発症率が高くなり、80歳までに「約3人に1人」が帯状疱疹を発症すると言われております。さらに、糖尿病やがん、膠原病などの自己免疫性疾患、腎不全、高血圧症などの基礎疾患がある人では発症率が高くなることが知られています。ちなみに帯状疱疹の再発率については約6%です。
〇帯状疱疹ワクチンを接種する目的
大きく3つあります。
・帯状疱疹の発症を予防する
・帯状疱疹の重症化を予防する
・痛みなどの後遺症を予防する
〇帯状疱疹ワクチンの種類について
今回の定期接種では「ビケン」と「シングリックス」という2種類の帯状疱疹ワクチンが使用されています。
「ビケン」は生ワクチンで、弱毒化された生きたウイルスを使用しています。もともとは水ぼうそう予防のワクチンとして開発されましたが、帯状疱疹の予防にも効果があることがわかり、現在使用されています。1回の接種で完結しますが、予防効果は接種1年後で約60%、5年後で約40%程度とされています。
「シングリックス」は不活化ワクチンで、ウイルスの一部の成分と免疫反応を高める物質を組み合わせており、生きたウイルスは含まれておりません。接種は2回必要で、2回目は約2-3か月後に接種します。予防効果は1年後、5年後ともに90%以上と高く、また10年後でも70%以上と言われており「ビケン」と比べて非常に効果が高く、長続きするのが特徴です。
※帯状疱疹後神経痛(PHN)の予防効果は「ビケン」で約60%、「シングリックス」では約90%以上とされています。
〇接種する場合の注意点と副反応について
「ビケン」は生ワクチンであり、免疫不全状態やステロイド長期服用中の方などは接種できません。2つのワクチンに共通する副反応としては接種部位の痛みや赤み、かゆみなどがあります。「シングリックス」は「ビケン」と比べて発熱や頭痛、筋肉痛、倦怠感などの副反応がやや多く認められます。
〇接種費用について(北海道伊達市の助成がある場合)
「生ワクチン(ビケン)」・・・2500円
「不活化ワクチン(シングリックス)」・・・1回7000円(2回接種するので合計14000円)
より高い予防効果や長期間の持続効果を希望する方は「不活化ワクチン(シングリックス)」、接種回数を1回で済ませたい方、安く済ませたい方、副反応を極力避けたい方は「生ワクチン(ビケン)」をご検討していただけたら幸いです。注意点としては65歳以上の方が定期接種で帯状疱疹の予防接種を受ける機会は該当する年齢となる年度の1年間のみです。つまり定期接種による公費負担を受けられる機会は生涯に一度だけです。ここは注意をお願いします。
以上長くなりましたが、帯状疱疹と帯状疱疹ワクチンについてご説明しました。当院でも連日帯状疱疹ワクチンの接種を行っております。ご希望の方は外来にてお声をかけていただくか、お電話にてご予約ください。ご不明点などございましたらご遠慮なくお尋ねください。